廣田有希さんにインタビュー(Volume62)

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    情熱インタビュー第62号にご登場いただくのは、廣田有希さんです。廣田さんは、東京 築地にある料理道具店『つきじ常陸屋』を取り仕切りながら、干し野菜の分野でも講演活動、書籍出版、テレビ番組出演などで大活躍をされています。そんな廣田有希さんが、干し野菜の魅力を伝えることになったきっかけについてインタビューさせて頂きました。

     

    −まず最初に、廣田有希さんの子供の頃のお話をお聞かせいただけますか?

    私は料理道具屋の娘として生まれました。お店は祖父の代から続く業務用の料理道具卸売業で、当時は場所も晴海通りに面した大きな店舗でした。そんなお店に学校帰りに毎日寄って、仕事が終わった母と月島の自宅まで一緒に帰るという日々を過ごしていましたので、子供の頃は料理道具が玩具でしたね。天ぷらを揚げる時の箸を太鼓のバチ代わりにして遊んだりしていました。小さい頃は、料理のレシピの本を読んだり、料理番組を見たりするのが大好きでした。

     

    −では、その頃から料理が大好きだったのですね。

    いえ、それが、料理を作るのではなく、ひたすら料理番組を見たり、レシピを研究したり、料理に関する書籍を読んだりしていたんですね(笑)。その後大学に進学しました。

     

    −大学ではどんな勉強や経験をされたのですか?

    大学では社会福祉学を学びました。その頃から芽生え始めたのが、周りの人たちが幸せになるための何かをしたいということでしたが、最初のうちは、具体的にどうしたらよいかは分からなかったのです。そんな時に国際ボランティアでメキシコに行く機会に恵まれて、そこで思いが具体的になってきたんです。

     

    −メキシコでですか?

    はい。メキシコでのボランティアの一環として、少年院に慰問してコミュニケーションを図るという機会があったんです。小学生や中学生ぐらいの年齢の子供たちが少年院に入っているのですが、その理由のほとんどが食べ物を盗んだことに起因するんです。親から言われて盗んだ子、お腹がすいて我慢できずに盗んだ子、同じ地球に暮らしていながらもこんなに違う環境にとても衝撃を受けました。そんな体験がきっかけとなって、『幸せ』と『食』というキーワードで将来は働きたいという思いが強くなっていったんです。

     

    −では、就職は食品関係に?

    すぐには就職せず、フードコーディネートを学ぶ専門学校にアルバイトをしながら通いました。その後、フード・コンサルティングの世界で活躍されている樋口社長と出会い、何とかお願いをして樋口社長の経営するコンサルタント会社に就職させてもらえることになりました。

     

    −弟子入りみたいな感じなのですね。

    はい。最初の頃は、間に合っていると断られていたのですが、何度かアタックしてようやく認めてもらえたんです。ちょうどその頃、JR品川駅構内のエキュート品川の店舗開発が始まった頃で、私も初めてながら樋口社長の指導の下で、お店のコーディネートを任せていただきました。その後、東京駅前の新丸ビルや、ラゾーナ川崎の開発の業務にも携わりました。

     

    −開発というと具体的にどんな仕事になるのですか?

    例えば、お店のコンセプトを決めて、その中でのメニュー作りや、物販、商品の開発を工場の方やシェフと一緒に行ったりします。フロア作り、出店に関するノウハウの提供やアドバイスなどもしてきました。

     

    −そこでは何年ぐらい働いたのですか?

    結局3年半お世話になりました。両親の経営する会社に入ったきっかけは、それまでの店舗の入っているビルが立ち退きしなければならなくなったことなんです。

     

    −大きなお店だったんですよね!?

    はい。晴海通りに面した広い店舗でした。両親は、祖父から受け継いだお店を潰すわけにはいかないと考えたのですが、すぐに物件が見つかるわけでもありません。そうこうしているうちに、築地市場の場外に小さなサイズではあるのですが、空き物件を見つけ、そこで再スタートを切ることにしました。それまでやっていた業務用料理道具の卸売については、かねてから卸売の営業を統括していた叔父が別の場所で引き継いで商売することにし、私たち家族は小売りを始めることにしたんです。でも、小売業のノウハウもなかったんです。

     

    −そこでコンサルタントでの経験が生きるのですね。

    はい。商品は、昔からある国産のしっかりした料理道具ばかりですから全く問題ありません。あとは、コンセプト、商品展開、飽きさせない仕組みづくり、内装、什器の配置など、教わってきたことを応用してお店作りを一からすることになりました。コンセプトは、皆が楽しめるお店作り、『料理道具のテーマパーク』と設定しました。ただ、このお店は単なる料理道具を売るためのお店ではなく、昔からずっと考えていた『幸せ』と『食』というキーワードを展開できるお店にしたいと思っていましたので、お店づくりと同時に、自然農法を展開される農家さんの支援なども行ったんです。


    −食材も一緒に売るのですか?

    はい。料理道具の販促として、食材も販売しています。きちんとした食材を紹介し、それを上手に調理してもらうための道具を紹介するという流れです。でも『食材』だけでも、『料理道具』だけでもなく、お店を通して地域のお客様に伝えて行きたかったことは『食』を通して『幸せ』になってもらえることなんです。私たちが提供するのは、職人さんが魂を込めて作った道具であり、ご先祖様から伝えられた日本の食文化なんです。そこから笑顔が生まれると素敵だなと思ってきました。

     

    −なるほど。料理道具を売るだけではなく、その文化や幸せを感じてもらう仕組みづくりをしてきたわけですね。廣田有希さんは、現在では料理道具屋の主人としてというよりは、干し野菜の研究家としてとても有名ですが、そのきっかけはどんなことだったのでしょうか?

    小売りの料理道具屋としてのスタートが切れましたが、どこかでオリジナル商品を開発したいと思っていたんですね。私たち料理道具の業界というのは、どうしても大きな外食産業に景気を左右されてしまうんです。外食産業がいいときは忙しく、どんどん売れる。でも、外食産業が落ち込んでくると、とたんに私たちにも影響が出てきてしまうんです。そういう意味からも、外食産業や流行りに左右されないオリジナル商品の必要性をずっと感じていました。そんな時、ちょうど農家さんのお手伝いの時に収穫したミニトマトがヒントになったんです。


    −ミニトマトですか?

    はい。食べきれないほどたくさん収穫できたので、保存方法を考えたんです。調べてみると、ジャムにしたり、オイル煮にしたりということが一般的なようですが、私はあまり甘いものや脂っこいものが好きではなかったんです。そして見つけたのが、ドライ・トマトです。朝切って、盆ざるに載せて干してみたんです。夕方にちょっとつまんで食べてみたら、びっくりしました。ものすごく美味しいんです。こんなに美味しいものがあったなんて今まで気づきませんでした。それぐらいの衝撃でした。

     

    −それが干し野菜との始まりですね。

    はい。ただ、その頃は、干し野菜をどうしようとか、そういうのではなくて、盆ざるを使っていただくための使用例としての干し野菜でした。そこでお客様に『盆ざるで干し野菜をつくってみませんか?』ということを勧め始めたのですが、今度は次の課題が出てきたんです。盆ざるで干しておくと鳥や猫に食べられてしまうから、美味しいことは知っているけどなかなか干せないというお客様の声を聞くようになったんですね。



    −確かに、そのままだと虫も寄ってきますしね。

    そこで、何か良い方法がないかと探したところ、釣り道具屋さんなどによく置いてある魚を干すためのあみを見つけたんです。そこで、私たちもそれを取り扱い始めたのですが、青い色をしたあのあみが、どうしてもオシャレに見えないんです。私たちの店舗はアース感やナチュラル感を基本にしていたので、青い干しかごがどうしても納得いかないんです。でも、悔しいけど売れていくんです(笑)。

     

    −確かにお店のブランド・イメージとちょっと違いますよね。

    そうなんです。その後もいろいろ探したのですが、気にいるのがなかったんです。それなら自分で作ってしまおうと思ったことがきっかけで、オリジナルの干しかごが生まれたんです。

     

    −どうやって作ったのですか?また、苦労したところはどんなところですか?

    干しかごは、漁網を使って作っているのですが、漁網を編んでいる職人さんと出会い、直接交渉して一緒に開発を進めてきました。一つ一つが手作りなのでとても手間がかかりますし、作るための材料はロッドで注文しなければならず、出来上がりで何千個という在庫をかかえることになります。一般的に売られている青い干しあみは千円程度で買うことができますが、私たちのオリジナル商品は四千円程度になります。売れなかったらどうしようという心配もしましたが、いざとなったら、かごを背負って銀座に行商に行こうと、心を決めました。これで、オリジナル商品を作りたいという思いが実現するし、干し野菜という『食』と、干しかごという『道具』と、それによって美味しいという『笑顔』につながる。そう信じで、これは絶対にやろうと決めました。


     

    −今までの干しかごにはない素敵なものなんですね。

    国産にこだわってきたお店でもありますので、この干しかごもそこにこだわりました。色も、ナチュラルな風合いで、インテリアとして部屋の中にあっても違和感のないものを目指しました。ほかにもファスナー部分なども工夫を凝らして使いやすいものにしました。そして実際に販売を開始すると、どんどん売れていくんです。今では自分の店舗だけでなく小売店に卸すこともできて、なんとか軌道に乗せることができて一安心です。

     

    −開発してよかったですね!ところで、廣田有希さんは最初から干し野菜の専門家になろうと思ったのではなかったのですね。

    はい。最初は、盆ざるを売るため。次にカゴを作り、最後はその中で干す野菜についてもたくさんの情報を発信しようと思って始めたことが、干し野菜に詳しくなるきっかけになったんです。

     

    −『食』の部分ですね。これはどうやって広げていったのですか?

    ブログに載せていた干し野菜のレシピを印刷して欲しいと頼まれるようになってきたのですが、だんだんとそういう声が多くなってきたので、一冊の本にまとめようと考え、自費出版で本を作ることにしたんです。その本を干しかごと一緒に販売するようにしてすぐに、NHKの朝の番組から取材依頼があったんです。それを機に出版社からも声がかかりはじめて、現在は4冊の書籍を出版することになりました。


    −ほかにも講演やセミナーも行っていると伺いましたが。

    地方の農林水産部からの依頼で、農家さん向けのセミナーなどに呼ばれるようになってきました

     

    −ミニトマトから始まった、干し野菜にまつわる仕事と生活という印象を受けますが、廣田有希さん自身はどう感じていますか?

    干し野菜をきっかけに、生活が明るくなったと実感しています。毎朝、まず空を見上げるようになりました。今日は干せるかな?って天気を気にするようになったんですね。そして、仕事をしていても、干し具合はどうかな?と空を見上げたり、出来栄えを喜んだりできるんです。野菜がこんなに甘くなるなんてこと自体にもびっくりしましたし、太陽の力や、野菜を作ってくれる農家の方たちの素晴らしさも感じることができるようになったんです。

     

    −私も昨年から『つきじ常陸屋』さんの干しかごで、干し野菜を始めましたが本当に甘味があって美味しくなりますよね。びっくりしました。そして、とても楽しく感じます。同じように出来具合がすごく気になるんです。それになんといっても手間が全くかからない。ざるに載せて、かごに入れたら、あとはお天道様まかせですからね(笑)


    私も、実は料理で褒められたことはないのですが(笑)、干し野菜や、干し野菜を使った簡単な料理は、家族にとても喜ばれています。去年、亡くなってしまったのですが、野菜が大嫌いの祖母も、これなら食べられると言って美味しく食べてくれました。それまでは、野菜を食べるときは、目をつぶって嫌々食べていたんです。ほかにも、子供が嫌いな野菜を食べられるようになったとか、そういう声も届くようになり、皆の笑顔が目に浮かんでくるようになってきたんです。


     

    −まさに、『食』と『幸せ』が融合したんですね。そしてどんどん広がっているのですね。

    はい。これからもどんどん広めていきたと思っています。実は、アメリカのロサンゼルスにも常陸屋を2年前に出店しているのですが、そこでも日本の食文化を伝え、日本の素晴らしい料理道具を販売しているんです。

     

    −アメリカに出店するきっかけはどんなことだったのですか?

    アメリカでも和食がだいぶ浸透してきましたが、和食を作るしっかりとした道具というものがなかなか手に入らないというニーズがあったんです。アジアの国々で作られた安い道具はすぐに壊れてしまうというんです。それに西海岸では包丁研ぎのプロがいなかったんですね。父は包丁を研ぐ職人でもあるので、そういったニーズに応えられると思い出店をしました。

     

    −アメリカでも干し野菜を広めているのですか?

    はい。実はカリフォルニア州は、ドライ・フルーツで世界的に有名な土地なんですね。砂漠が近くにあることから想像しやすいのですが、空気が乾燥していて、太陽の光がたくさん届くという、干しものには最適な場所なんです。私も年に34回は、ロスで干し野菜講座を行っています。

     

    −日本に留まらず、グローバルにますます広がっていきますね。一番新しい著書に、干しエノキダイエットという本がありますが、これは身体にいいだけじゃなく、ダイエットにも効果があるということなんですか?

    裏話ですが、これは依頼があって書いた本なのです。内臓脂肪を落とす成分がエノキには含まれているそうですが、干すことによって体に吸収しやすくなるということだそうです。そういう学会発表をされるとのことで、そのタイミングでの出版が決まりました。内臓脂肪への効果ということも興味深いですが、私の中では、エノキから美味しい出汁が取れるというところに着目しています。日本では椎茸で出汁を取る文化がありますが、エノキはクセもなく椎茸に匹敵するぐらい濃い出汁が取れます。ほかにも、干しエノキはお酒のおつまみにもなりますし万能なんですよ。

     

    −私の中では出汁より内臓脂肪ですね(笑) さて、最後に今後の展望を聞かせていただけますか?

    今までの干し野菜の講座は平日の昼間の開催のため、働いている方の参加は難しかったのですが、これからは社会人・企業向けに講座を行っていきたいと思っています。

    干し野菜で空を見上げ太陽を意識する生活は、気分を前向きにしたり、毎日を豊かにしてくれると事を感じています。日本を支える大人たちが干し野菜によって“太陽を感じる生活”で前向きな明るい毎日を送れれば、世の中がより明るくなると考えています。それに美味しく健康というお土産つき(笑)

    また、日本各地で農家対象の講演をし、農家の皆さんがご自身の野菜をもっと美味しく楽しむノウハウを発信してもらえるような手伝いをしていきたいです。

    旅行も大好きなので、旅先では世界の野菜を干して“太陽を感じる生活”を広く伝えていきたいと思います。

     

    −素敵なお話をありがとうございました。


    【干し野菜アート展用に1】


    【干し野菜アート展用に2】


    【たわしのクリスマスツリー】


    【大人気の“たわしんぼ”】


    【エコバック】


    【たくさんの料理道具】


    【プロ用も一般家庭用も扱っています】



    【廣田さんの出版物】

    「干しえのきダイエット」(ブルーロータスパブリッシング)1300

    「干し野菜をはじめよう」 (文藝春秋)1400

    「干し野菜で作る小さなおつまみ」 (マイナビ) 1500

     

     

    【大角所感】

    干し野菜というジャンルにおいてブランドを確立された廣田有希さんですが、その軸にあるのは、干し野菜を通して皆が幸せになることでした。『食』と『幸せ』を見事に融合させ、そこに学生時代に学んだ『社会』、『福祉』が加わりました。グローバルに活躍し、時代をつくっているトップランナーでありながら、日本の伝統や文化、見映えの美しさなど、細かい部分への大事なこだわりを大切にする方でした。

     

    築地という日本の食文化を育ててくれたお膝元での商い(ビジネスというニュアンスではなく“商い”と表現したくなります)、月島という江戸文化を引き継ぐ町で生まれ育ったことが、その考えの土台の部分に根付いているのではないかなと感じました。

     

    本文にも書きましたが、私も昨年から干し野菜の魅力にとりつかれた一人です。天気、温度、湿度を気にしながら、つきじ常陸屋特製の干しかごと盆ざるに、エノキ、大根、生姜、トマト…様々な野菜を載せて楽しんでいます。夜の晩酌に、自分が干した野菜で一杯やるなんて最高です。ぎゅっと凝縮された野菜の甘さに、食べ物のありがたさ、太陽のありがたさ、農家の方たちのありがたさを改めて噛み締めることができるのです。

     

    二千万トンを越えると言われている食品廃棄物が発生する日本という国、今日の一食が食べられなくて食べ物を盗む子供たち、その食べ物もない国、世の中の矛盾を感じ、これを環境側面から何とかして解決のお手伝いができないか?と考えました。

     

    これは仕事としても使命を果たす上で大事なことであると同時に、我々(私自身も)の麻痺してしまったかもしれない『食』への感謝の念をもう一度考えなおし、常に意識すべき大切な問題だと気づかされました。

     

    国が悪い、外食産業が悪いではなく、まず自分に何ができるか?それを実行することが一番大切なことではないかと、廣田有希さんのインタビューを通して感じました。ありがとうございます。



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